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2008年1月11日 (金)

1月 第3回 【急げ、理系への道】

理系、とくに数物系は若者から敬遠されがちです。
いわゆる『理科離れ』というのでしょうか。

考えてみればこの傾向は当たり前といえば当たり前、とも言えることです。
ややこしい数式・公式を憶えるだけではありません。それらを使って、問題を解く練習です。
例えばこうです。

~初速度30m/sで、水平方向と60度で放射されたボールはどこまで到達するか。またこのボールの軌道の最高到達地点の高さは何mか。~

実際にはこんな計算の場面などには、一般生活では決して出会いません。ボールの初速度など測定しながらボールを投げることなど有り得ないわけです。実際、ボールの速度の測定は難しいのです。

いくらなんでもこんなややこしい、しかも何の役にも立ちそうもない計算を1ヶ月近くもやらされるのです。しかも今度は実験です。大抵の計測装置は高度で、その内容・機能などはブラックボックスなのです。生徒は単にこれらの計測・測定装置を使って測定をやらされ、データを記録させられ、グラフを書かされ、レポート提出を求められます。

こんな理系の勉強は面白みもなく、飽き飽き。まずこんな理系、数物系の生活に反抗して志望しなくなったのは女性でした。「女性は数物系には向かない。」と。そして、これが男性に蔓延してきた、とも言えます。

しかし、これではいけない。科学文明はどこへ行く。科学立国の掛け声は空回りになる恐れがあります。
そこで打ち出されたのが官民あげての理科・科学キャンペーンです。大金を投じて科学博物館を造り、プラネタリウムを設置してきました。

夏休み・春休みには、『こども科学実験ショー』なるイベントが盛んです。私も毎年、方々のイベントに招かれて、火の玉の実験などをやってきました。
しかし、こんな大人の努力をあざ笑うかのように、依然として理科離れは深刻です。どのような教育をしたら、理科・科学好きの子供を育てることができるのか。

この課題こそ私の『急げ、理系への道』(NHK出版)のテーマでした。私はまずこの本で、理系を選ぶのがどんなに素晴らしいものか、を具体的に主張しました。文系に比べて理系の学問がどんなに素晴らしいものかを説明しました。
さらに、東大や早稲田大学の理系・理工系のエリートがどんな素晴らしい将来が約束されているか、を書きました。

原稿は昨秋に完成。後輩の文系の人などに閲読をお願いしました。ところが、この文系の優秀な後輩は、私の原稿を読み終えると、色をなして怒り出しました。
「理系・文系の比較で、あまりにも理系優先、あるいは文系に対する誤解や差別意識がある。教育に対しても無理解・無分別だ。東大、早稲田などのエリート意識まる出しではないか。戦後の民主教育での根幹を理解していない。」と。

この意見はもっともです。私はそれを意図したのですから。つまり理系優先、文系に対する優越意識。しかも東大や早稲田のエリート意識。すべて私は当初から意図したものです。

それはそうでしょう。この本は、『いかにして子供を理系志望に仕向けるか』ということが主題です。また、『その親や教師がいかにして理系志望の生徒をつくるか』というのが目的です。この本がこれが主題なら、理系絶対、理系至上主義を貫くのは当然です。また、子供の進学指導で一流理工系を目指すのは当たり前なのです。

逆にこの本の目的にも関わらず、「理系より文系の方が面白いし、文系の方が広い視野に立ってものごとを判断できる。」などと書いたのでは、何のための『急げ、理系への道』でしょうか。

理科・科学教育の過程では、戦後民主主義も教育の機会均等も無視します。いま必要なのは理系エリートだからです。

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